高熱とのどの痛みで仕事や学校を休む、年に何度も扁桃に白い膿がつく、抗菌薬を飲むと一度良くなるが再発する――反復性扁桃炎では、その都度の重症度だけでなく、頻度、欠席・欠勤、扁桃周囲膿瘍の有無を記録することが大切です。扁桃炎の原因にはウイルスと細菌があり、白い付着物があるだけで抗菌薬が必要とは限りません。片側の強い痛み、口が開かない、こもった声、唾液を飲めない場合は扁桃周囲膿瘍を疑い、早急な診療が必要です。
この記事の結論
扁桃炎を繰り返す場合は、発症日、発熱、検査、使用した抗菌薬、欠席・欠勤日数を記録して耳鼻咽喉科へ相談してください。細菌性が疑われるときは適切な抗菌薬を使用し、膿瘍になれば切開・穿刺による排膿や入院治療が必要になることがあります。扁桃摘出術は回数だけで一律に決めず、重症度、膿瘍歴、生活への影響、睡眠時の呼吸などを含めて個別に検討します。
急性扁桃炎とは
口を開けた奥の左右にある口蓋扁桃に急な炎症が起き、のどの痛み、発熱、飲み込みにくさ、倦怠感などが現れます。扁桃が赤く腫れ、白い膿栓や白苔が付くことがあります。
原因はウイルス性と細菌性に分かれます。アデノウイルス、インフルエンザ、EBウイルスなどでも強い扁桃炎が起こり、A群溶血性レンサ球菌などの細菌でも発症します。症状と見た目だけでは完全に区別できないため、年齢、咳や鼻水の有無、周囲の流行、検査結果を合わせて判断します。
| 確認する症状 | 診断で考えること |
|---|---|
| 咳・鼻水・結膜炎 | ウイルス感染を示唆することがある |
| 高熱・強い嚥下痛 | 細菌性でもウイルス性でも起こる |
| 白い膿 | 細菌性に限らず、EBウイルスなどでもみられる |
| 首のリンパ節腫脹 | 感染症でよくみられ、部位や程度を確認する |
| 発疹 | 溶連菌、ウイルス、薬剤反応などを考える |
扁桃炎を繰り返すのはなぜ?
幼稚園・学校・家庭で別の感染症に繰り返しかかることもあれば、扁桃のくぼみに細菌が残り再燃しやすくなることもあります。睡眠不足、喫煙、乾燥、強い疲労で症状が出やすい方もいます。ただし、「免疫が弱い」と一つの理由で片づけることはできません。
似た症状を繰り返す病気として、扁桃周囲炎、PFAPA症候群、伝染性単核球症、周期性好中球減少症、自己炎症性疾患などがあります。発熱が一定間隔で起こる、口内炎や頸部リンパ節炎を伴う、通常の治療に反応しない場合は追加評価が必要です。
扁桃に白い粒があり、発熱や強い痛みがない場合は、膿栓・扁桃結石のことがあります。見た目が似ていても急性扁桃炎とは限らないため、無理に器具で取らないでください。
片側だけ強く痛む「扁桃周囲膿瘍」
扁桃炎が周囲へ広がり、扁桃の外側に膿がたまった状態です。通常の扁桃炎よりも片側の痛みが強く、耳の奥まで響く関連痛、口が開きにくい開口障害、含み声のようなこもった声が特徴です。口蓋垂が反対側へ押されることもあります。
- 片側ののどが非常に痛い
- 痛くて口を十分に開けられない
- 声がこもり、話しにくい
- 唾液を飲み込めず、よだれが出る
- 同じ側の耳まで痛む
- 高熱が続き、首が腫れる
膿瘍では抗菌薬だけでなく、針で吸引する穿刺や切開排膿が必要になる場合があります。脱水、気道の狭窄、頸部深部への感染拡大があれば入院治療を検討します。一度起こした方は再発することがあり、その後の手術適応も含めて相談します。
呼吸・嚥下に関わる症状は緊急受診を
のどの感染が急速に腫れると、空気の通り道に影響することがあります。次の症状があれば、夜間でも救急診療や救急要請を検討してください。
- 息が苦しい、吸うときに音がする
- 唾液も飲み込めず、よだれが出る
- 短時間で首の腫れが広がる
- 口がほとんど開かない
- 意識がぼんやりする、反応が悪い
- 水分が取れず尿が極端に少ない
耳鼻咽喉科で行う検査
口腔・咽頭・頸部の診察
左右の扁桃、白苔、口蓋垂の偏位、開口障害、首の腫れを確認します。必要に応じて鼻から内視鏡を入れ、喉頭蓋や気道まで観察します。
迅速検査・培養検査
A群溶血性レンサ球菌が疑われるときは迅速抗原検査や培養を検討します。検査の必要性は年齢、症状、流行状況によって異なり、陽性・陰性だけでなく臨床所見を合わせます。
血液・画像検査
重症度、脱水、伝染性単核球症などを調べるため採血することがあります。膿瘍の広がり、深頸部感染、気道への影響が疑われる場合は造影CTなどを検討します。
過去の発症回数を正確に把握するため、お薬手帳、検査結果、受診歴、学校・仕事を休んだ日を持参すると、手術適応の検討にも役立ちます。
扁桃炎の治療と抗菌薬
ウイルス性では、水分摂取、解熱鎮痛薬、休養などの対症療法が基本です。抗菌薬はウイルスには効かないため、細菌性が疑われる場合に適切な種類と期間で使用します。以前の残薬を飲む、症状が軽くなった時点で中止する、家族の薬を使うことは避けてください。
伝染性単核球症では、一部のペニシリン系抗菌薬を使用すると発疹が出やすいことが知られています。強い倦怠感、肝機能障害、全身のリンパ節腫脹などがある場合は、病歴と検査を踏まえて治療を選びます。
扁桃周囲膿瘍では、抗菌薬、点滴、鎮痛に加えて排膿処置を行います。改善しない、感染が広がっている、食事・水分が取れない場合は入院が必要です。治療後も再発や合併症がないか経過を確認します。
扁桃摘出術を検討するのはどんなとき?
反復性扁桃炎に対する口蓋扁桃摘出術は、発症回数だけで機械的に決めるものではありません。1回ごとの高熱や重症度、抗菌薬の使用、扁桃周囲膿瘍の既往、欠席・欠勤、受験や仕事への影響、家族の負担を総合して判断します。
ただし、「年4回に達したら必ず手術」という基準ではありません。海外の小児ガイドラインでは、診療録で確認できる咽頭感染が直近1年に7回以上、2年連続で年5回以上、または3年連続で年3回以上など、より厳しい回数基準も用いられています。年齢、経過観察中の自然軽快、発熱・白苔など各回の所見、手術リスクを含めて個別に判断します。
- 扁桃炎を何度も繰り返し生活への支障が大きい
- 扁桃周囲膿瘍を起こした、または再発した
- 抗菌薬治療を繰り返している
- 扁桃肥大によるいびき・無呼吸・嚥下障害がある
- 病巣感染との関連が疑われる病気がある
手術は全身麻酔で行い、術後出血や強い疼痛などのリスクがあります。年齢、基礎疾患、入院期間、期待できる利益を説明し、手術を行う医療機関と連携して決めます。「何回なら必ず手術」という一律の答えではなく、実際の負担を記録して相談することが重要です。
再発時に備えて記録しておきましょう
反復性扁桃炎では、症状がない日に診察すると過去の重症度が分かりにくいことがあります。毎回、発症日、最高体温、白苔の有無、迅速検査結果、処方薬、改善までの日数、欠席・欠勤、膿瘍処置の有無を記録してください。
普段は睡眠と水分を確保し、喫煙・受動喫煙を避け、手洗いを行います。ただし、うがいだけで反復を完全に防ぐことはできません。家族内で溶連菌感染が続く、薬を飲み切ってもすぐ再発する場合は、自己判断で予防投薬をせず医療機関へ相談します。
よくある質問
扁桃に白いものがあれば抗菌薬が必要ですか?
扁桃炎は人にうつりますか?
扁桃周囲膿瘍は薬だけで治りますか?
扁桃を取ると免疫が下がりますか?
子どもと大人で手術の考え方は違いますか?
参考情報
- 藤原啓次ほか「反復性(習慣性)扁桃炎、扁桃病巣疾患に対する手術適応」口腔・咽頭科 2005;17(2):205-210
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「慢性扁桃炎」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 Web用語集「反復性扁桃炎」
- Clinical Practice Guideline: Tonsillectomy in Children (Update), 2019
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「口腔・咽頭の病気」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳鼻咽喉科領域の抗菌薬適正使用」
※呼吸困難や唾液を飲み込めない症状は、通常の外来待ちではなく緊急対応が必要です。


