手足口病とヘルパンギーナは、どちらも主にエンテロウイルスによって起こり、乳幼児を中心に夏に流行する感染症です。口の中に水疱や潰瘍ができる点は似ていますが、手足の発疹が目立つ手足口病と、突然の高熱とのどの奥の水疱が目立つヘルパンギーナでは、典型的な症状の出方が異なります。
この記事の結論
多くは自然に改善し、抗菌薬が効く病気ではありません。大切なのは、口の痛みがあっても少量ずつ水分を取れるか、尿が出ているか、意識や呼吸に異常がないかを確認することです。水分が取れない、半日近く尿が出ない、ぐったりする、繰り返し吐く、強い頭痛やけいれん、呼吸がおかしい場合は、早めの受診や救急相談が必要です。
手足口病とヘルパンギーナの違いを比較
次の表は典型的な違いです。実際には原因ウイルスや年齢によって症状に幅があり、手足口病でも高熱が出る、ヘルパンギーナでも口以外に発疹がみられるなど、表に当てはまらない場合があります。
| 比較項目 | 手足口病 | ヘルパンギーナ |
|---|---|---|
| 発熱 | 発熱しない、または比較的軽いことも多い | 突然の高熱で始まることが多い |
| 口の中 | 舌、頬の内側、唇の内側など前方にも水疱・潰瘍 | 軟口蓋、口蓋弓など、のどの奥に小さな水疱・潰瘍 |
| 皮膚の発疹 | 手のひら、足の裏、指、膝、肘、おしりなど | 通常は手足の典型的な発疹を伴わない |
| 主な困りごと | 口の痛み、発疹。年少児では食欲低下 | 強い咽頭痛、高熱、飲水・食事の困難 |
| 原因 | 複数のエンテロウイルス。原因ウイルスは年によって異なる | |
| 治療 | 特効薬はなく、通常は水分補給や解熱鎮痛などの対症療法 | |
発疹の場所だけで家庭で確定診断するのは難しく、水ぼうそう、単純ヘルペスによる歯肉口内炎、溶連菌感染症、薬疹など別の病気との区別が必要なこともあります。
手足口病の主な症状
手足口病では、口の中、手のひら、足の裏や足の甲などに小さな水疱性発疹が現れます。肘、膝、おしり、口の周囲まで広がることもあります。発疹は痛みやかゆみが軽い場合もあれば、足の裏が痛くて歩きたがらない場合もあります。
発疹より先に発熱することもあります
初日は発熱とのどの痛みだけで、翌日以降に手足の発疹がそろうことがあります。受診時に発疹が少ない場合でも、保育園やきょうだいでの流行、口内の所見、その後の経過から診断が明確になることがあります。
治った後に爪が浮くことがあります
原因ウイルスによっては、回復から数週間〜1、2か月ほど後に、手足の爪へ横線が入る、爪の根元から浮くといった変化がみられることがあります。多くは新しい爪が伸びて改善しますが、赤く腫れる、膿が出る、強く痛む場合は受診してください。
ヘルパンギーナの主な症状
ヘルパンギーナは、2〜4日ほどの潜伏期間を経て、突然の発熱とのどの痛みで始まることが典型的です。口を開けると、のどの奥にある軟口蓋から口蓋弓にかけて小さな水疱ができ、破れると浅い潰瘍になって強く痛みます。
乳幼児は「のどが痛い」と言えず、不機嫌、よだれが増える、飲み込むと泣く、哺乳や食事を嫌がるといった様子で気づくことがあります。高熱そのものより、口の痛みで水分を取れなくなることに注意が必要です。
手足に発疹がなければ必ずヘルパンギーナ?
手足の発疹がないだけでは確定できません。発症初期の手足口病、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症、歯肉口内炎などでも発熱とのどの痛みが出ます。のどの水疱の位置や全身症状を診察して判断します。
感染経路と潜伏期間
両疾患は、咳やくしゃみによる飛沫感染、唾液や水疱内容物などに触れる接触感染、便から手を介して口へ入る糞口感染で広がります。症状が治まった後も便中へウイルスが排出されるため、元気になった後もトイレやおむつ交換後の手洗いが重要です。
- タオル、コップ、食器の共用を避ける
- 鼻水やよだれを拭いた後は石けんと流水で手を洗う
- おむつは適切に処理し、交換後に手を洗う
- よく触れるおもちゃやドアノブを清潔にする
- 咳やくしゃみがある場合は咳エチケットを行う
家庭での水分補給と食事の工夫
口内炎が痛いときは、一度に多く飲ませるより、冷たい水や経口補水液などを少量ずつ回数を分けて与えます。酸味、塩味、熱さが強いものはしみやすいため、本人が取りやすい温度と味を選びます。
食べやすいもの
- 冷ましたおかゆ、やわらかいうどん
- 豆腐、茶碗蒸し、スープ
- ゼリー、プリン、ヨーグルトなど、しみにくいもの
- 乳児は一回量を減らし、哺乳回数を分ける
食事が一時的に少なくても、水分が取れて尿が出ていれば慌てなくてよいことがあります。一方、水分まで拒否する場合は脱水が進む前に受診してください。
解熱剤の使い方
体温の数字だけでなく、つらくて眠れない、水分が取れないときに、医師から指示された解熱鎮痛薬を使用します。家族に処方された薬や残薬を自己判断で使わず、年齢と体重に合う薬を確認してください。
受診・救急相談の目安
診療時間内に早めに相談したい状態
- 口の痛みで水分や食事がほとんど取れない
- 尿の回数や量が明らかに減った
- 高熱が続く、いったん下がった熱が再び上がる
- 発疹が急速に広がる、強く痛む、化膿している
- 乳児で哺乳量が大きく減った
- 基礎疾患がある、免疫機能が低下している
- 家族内に妊娠中の方や免疫不全の方がいる
救急受診を含めて判断したい危険なサイン
- ぐったりして反応が悪い、意識がいつもと違う
- けいれんがある
- 強い頭痛、繰り返す嘔吐、首を動かしたがらない
- 呼吸が速い、息苦しそう、顔色や唇の色が悪い
- 半日近く尿が出ない、口が乾く、泣いても涙が出ない
- 生後3か月未満の乳児に発熱がある
手足口病とヘルパンギーナは多くが軽症ですが、まれに無菌性髄膜炎、脳炎、心筋炎、心肺機能不全などを合併します。診断名が分かっていても、経過中に様子が変わった場合は再受診してください。
診断と治療|抗菌薬は必要?
多くは、発熱の経過、口内の水疱や潰瘍の位置、手足の発疹、周囲の流行状況などから臨床的に診断します。全員にウイルス検査や血液検査を行うわけではありません。重症化が疑われる場合や、別の病気との区別が必要な場合に追加検査を検討します。
原因はウイルスのため、通常の抗菌薬は効きません。治療の中心は水分補給、休養、必要に応じた解熱鎮痛薬などです。脱水や合併症があれば点滴や入院治療が必要になることがあります。
耳鼻咽喉科で確認できること
耳鼻咽喉科では、口とのどのどこに水疱や潰瘍があるか、扁桃炎、溶連菌感染症、歯肉口内炎など別の病気が疑われないかを確認します。よだれが多い、声が出しにくい、呼吸音がおかしい場合は、のどの腫れや気道への影響も評価します。
保育園・幼稚園・学校はいつから行ける?
厚生労働省の保育所向けガイドラインでは、両疾患とも「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事が取れること」が登園の目安です。発疹が完全に消えるまで一律に休むという基準ではありません。
解熱していても、口が痛くて水分や給食を取れない、元気がなく集団生活が難しい場合は休ませます。反対に、便からは回復後もしばらくウイルスが排出されるため、発疹がすべて消えるまで休んでも流行を完全に防ぐことは困難です。
家庭内感染を減らすためにできること
完全に家庭内感染を防ぐことは難しいものの、ウイルスを手から口へ運ばない対策が基本です。特に乳幼児のおむつ交換後、トイレ後、食事前は丁寧に手を洗います。
- 石けんと流水で、指の間や爪の周囲まで洗う
- 手拭きタオルを共用しない
- コップ、食器、歯ブラシを分ける
- よだれのついたおもちゃや机を清潔にする
- 回復後も数週間は排便後の手洗いを続ける
一度かかっても、異なる型のウイルスによって再び手足口病やヘルパンギーナにかかることがあります。「去年かかったから今年は大丈夫」とは限りません。
よくある質問
手足口病とヘルパンギーナは同時にかかりますか?
大人にもうつりますか?
発疹に塗り薬は必要ですか?
お風呂に入ってもよいですか?
発疹が残っていても登園できますか?
どのくらいで治りますか?
参考情報
- 国立健康危機管理研究機構「IDWR 2026年第26号 手足口病・ヘルパンギーナ」
- 東京都「手足口病が流行、都内で警報基準に達する」
- 国立健康危機管理研究機構「ヘルパンギーナ(詳細版)」
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」
- 当院「こどもの症状・病気」
※流行状況は変化します。本記事の数値は2026年8月3日までに公表された情報に基づきます。



