いびき・睡眠時無呼吸症候群

放置すると体に悪影響?!
「いびき」と「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の関係とは?

「グーグー」と毎晩聞こえる、あの「いびき」。周囲の人がうるさいと感じるだけでなく、実は重大な病気のサインかもしれません。その病気とは「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)」
睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気で、「大きないびき」「日中の強い眠気」などは、SASの代表的な症状です。放っておくと、高血圧や心筋梗塞、脳卒中といった、命に関わる病気を引き起こすリスクも!「たかが、いびき」と安易に考えず、ご自身や大切な方の健康のためにも、ぜひ一度ご相談ください。

いびき・睡眠時無呼吸症候群放置しないで!睡眠時無呼吸症候群(SAS)の危険性

SASは、単なる睡眠の質の低下だけでなく、以下のような様々な合併症を引き起こし、命を脅かす可能性も孕んでいます。

死亡リスクの増加:1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数が20回以上の重症SASの患者さんでは、8年後の死亡率が37%にも及んだという報告があります。(1)
循環器疾患のリスク増加:高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中、突然死などの循環器疾患のリスクが2~4倍も高くなることが知られています。
代謝性疾患のリスク増加:糖尿病や脂質異常症を引き起こし、動脈硬化のリスクを高めます。
認知機能障害:SASは、集中力、記憶力、判断力などの認知機能を低下させる可能性があります。
うつ病:睡眠不足や日中の眠気によって、うつ病を発症しやすくなります。
交通事故リスク増加:日中の強い眠気によって、運転中の居眠り運転による交通事故のリスクが2.5倍に増加することが明らかになっています。(6)

症状が出たり重症化する前に、まずは簡易検査を行うことをおすすめします。

いびきってそもそも何?どうしてなるの?

いびきは、睡眠中に狭くなった気道を空気が通るときに、のどの奥の粘膜が振動して発生する音です。
就寝中は、全身の筋肉が弛緩するため、気道も狭くなりやすくなります。特に、仰向けで寝ると、重力の関係で舌の付け根や軟口蓋などが気道を塞ぎやすくなるため、いびきをかきやすくなるのです。

いびきの原因

いびきは、誰にでも起こりうる現象ですが、特に以下のような要因があると、いびきをかきやすくなると言われています。

肥満:肥満は脂肪が気道を圧迫するため睡眠時の状態に悪影響を及ぼします。肥満度を示すBMI(Body Mass Index)が25以上の方は、検査と並行してダイエットを行うことをお勧めします。体重を10%落とすとAHIは26%減少するという報告があります。
飲酒:アルコールの摂取により、気道の筋肉が弛緩しやすくなり、鼻やのどの粘膜がむくむためいびきの原因となります。
鼻の病気:鼻づまりによって口呼吸になると、気道が狭くなりいびきを悪化させます。アレルギー性鼻炎(花粉症)や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻中隔彎曲症、稀に鼻腔腫瘍や上咽頭癌などが原因となることもあります。
扁桃腺肥大/アデノイド肥大:いわゆる扁桃腺(口蓋扁桃)やアデノイド(咽頭扁桃)が大きいと、気道を狭くする原因となり、いびきを引き起こします。
あごの骨格:あごが小さい、または後退しているなど、生まれつき気道が狭い場合もいびきが起こります。日本人を含むアジア人はあごが小さい傾向にあるため、肥満などがなくてもいびきが起こりやすいです。
加齢:年齢を重ねるにつれて気道の筋肉が衰えることで、気道が狭くなりやすく、いびきの原因となります。
喫煙:タバコの煙が気道の炎症を引き起こし、粘膜を腫れ上がらせるため、いびきの原因となります。
薬の副作用:睡眠薬や筋弛緩剤など、一部の薬は気道の筋肉を弛緩させるため、いびきの原因となります。
遺伝:いびきや睡眠時無呼吸症候群になりやすい体質が遺伝する場合があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状

SASは、睡眠中に起こる病気であるため、自覚症状がない場合も少なくありません。そのため、周囲の人からの指摘で気づくケースも多いです。

睡眠時の症状
⚫︎大きないびき:特に、息が止まった後に大きなイビキをかいている
⚫︎呼吸停止:睡眠中に何度も呼吸が止まっている
⚫︎睡眠中の頻繁な覚醒:呼吸困難などで目が覚める
⚫︎寝汗をかく:呼吸しようと体が頑張るため
⚫︎歯ぎしり:睡眠中のストレスによるもの

日中の症状
⚫︎日中の強い眠気:日中、我慢できないほどの眠気に襲われる
⚫︎集中力・記憶力の低下:仕事や勉強に集中できない、物忘れが多くなる
⚫︎起床時の頭痛:朝起きた時に頭痛がする
⚫︎口渇:朝起きた時に口の中が渇いている
⚫︎のどの痛み:口呼吸によって、のどが乾燥しやすくなるため
⚫︎イライラしやすくなる:睡眠不足や酸素不足の影響で、精神的に不安定になる
⚫︎性欲減退:ホルモンバランスの乱れや、精神的なストレスによって性欲が減退する


睡眠時無呼吸症候群(SAS)3つのタイプ

SASは、原因や症状によって、いくつかのタイプに分類されます。

1.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
最も一般的なタイプのSASです。睡眠中に、気道が完全に塞がったり、極端に狭くなったりすることで、呼吸が止まります。
原因:肥満、扁桃腺肥大、アデノイド肥大、あごの骨格異常、鼻の病気など
症状:大きないびき、呼吸停止、日中の強い眠気、集中力低下、起床時の頭痛など

2.中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中、突然死などの循環器疾患のリスクが2~4倍も高くなることが知られています。
脳が呼吸を指令する機能に異常が生じ、呼吸が浅くなったり、止まったりするタイプのSASです。比較的稀なタイプです。
原因:脳梗塞、脳腫瘍、神経筋疾患、心不全、薬剤性など
症状:呼吸が浅くなる、呼吸が止まる、睡眠中の覚醒、日中の眠気、頭痛など

3.混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞性と中枢性の両方の要素が組み合わさって起こるSASです。

検査について

SASの検査には、主に以下のものがあります。

1.問診
・いびき、日中の眠気、睡眠中の呼吸停止など、症状について詳しくお伺いします。
・生活習慣(飲酒、喫煙、睡眠時間、服薬状況など)についても伺います。
・家族にSASと診断された人がいないか、過去の病歴なども確認します。

2.診察
内視鏡検査:鼻、口の中、のどの状態を診察し、気道が狭くなっている原因がないかを調べます。
内視鏡検査は保険3割負担の方で1,800円となります。

3.簡易検査
呼吸、いびき、体位・体動、脈拍数、血液中の酸素飽和度などをモニタリングし、睡眠の状態を詳しく調べる検査です。
検査キットを貸出しさせていただき、ご自宅で一晩または二晩検査を行っていただきます。検査後に検査キットを返却していただき、当日結果をご説明いたします。
様々な項目を確認しますが、特に「呼吸障害指数:RDI」という数値が診断に重要となります。

RDI(呼吸障害指数)

検査中に認められた10秒以上の無呼吸や低呼吸の総回数を記録時間で割った数を「呼吸障害指数:RDI」と言います。

RDI
5未満:正常
5〜15未満:軽度
15〜30未満:中等度
30以上:重症

・簡易検査では脳波をつけていないため、睡眠時間ではなく記録時間で無呼吸や低呼吸の総回数を割るため、実際の無呼吸の数値より軽く判定される傾向にあります。
・睡眠時無呼吸症候群の確定診断には、この後ご説明する精密検査「PSG検査」が必要ですが、RDIが40以上の重症SASの方では、簡易検査のみで治療に移行する場合がございます。
・簡易検査は保険3割負担の方で2,700円となります。

4.精密検査:終夜睡眠ポリグラフ検査 (PSG検査)

脳波、呼吸、筋電図、いびき、体位・体動、脈拍、血液中の酸素飽和度などをモニタリングし、睡眠の状態を詳しく調べる検査です。
当院では基本的に検査機器をご自宅にお送りし、在宅での検査をご案内しております。
様々な項目を確認しますが、特に「無呼吸低呼吸指数:AHI」という数値が診断に重要となります。

AHI(無呼吸低呼吸指数)

検査中に認められた10秒以上の無呼吸や低呼吸の総回数を睡眠時間で割った数をAHIと言います。

AHI
5未満:正常
5〜15未満:軽度
15〜30未満:中等度
30以上:重症

PSG検査は保険3割負担の方で1,1250円となります。

治療法について

SASの治療法は、症状の程度や原因、患者の状態によって異なります。

1.生活習慣の改善
軽度のSASの場合、生活習慣の改善だけで症状が改善することもあります。

減量:肥満はSASの大きな原因となるため、減量は効果的です。
肥満のSAS患者が10%の減量に成功した場合、無呼吸低呼吸指数(AHI)が有意に減少し、日中の眠気などの症状も改善したという報告があります。(1) 当院には管理栄養士も在籍しておりますので、必要に応じて栄養指導を受けることも可能です。
禁煙:タバコは気道の炎症を引き起こし、症状を悪化させるため、禁煙は必須です。
飲酒制限:アルコールは気道の筋肉を弛緩させ、いびきや無呼吸を悪化させるため、飲酒は控えましょう。
睡眠時の体位:横向きで寝ることで気道が確保されやすくなるため、横向き寝で無呼吸が改善される方には、横向き寝を促進する枕が有効な場合があります。ただし、人は一晩に20~40回程寝返りをうつと言われていることから、それを防止することで体の痛みや睡眠の障害を認める可能性もあるため、注意が必要です。
規則正しい生活:睡眠不足はSASのリスクを高めるため、規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。
適度な運動:適度な運動は、肥満の解消、ストレスの軽減、睡眠の質向上に役立ちます。

2.薬物療法
鼻づまりは、いびきや無呼吸の直接的な原因ではありませんが、口呼吸になることで気道が狭くなり間接的に悪影響を及ぼします。鼻づまりを認める方に対しては睡眠前の点鼻薬や鼻づまりを改善する内服薬を処方いたします。鼻の構造が原因でお薬でも鼻づまりが改善しない場合では、鼻のレーザー治療や手術も選択肢の一つです。

3.マウスピース療法(OA療法:Oral Appliance)
就寝時にマウスピースを装着し、下顎を少し前に出した状態を維持することで気道を広げます。軽度から中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS)が良い適応となりますが、重症の方では効果が不十分になる可能性があります。下顎の小さな方、舌の大きな方は重症の場合でも有効な場合があります。
当院は矯正歯科を併設しており、マウスピースの作成も当院で行うことが可能です。マウスピース療法は通常、医科で無呼吸検査を行い、適応があれば歯科で作成、再度医科で効果判定の検査をし、歯科で再調節と行き来する必要があります。
また、当院では医科と歯科で連携を行いながら一貫して行うことができますので、安心して治療を受けていただけます。
保険適応となる一体型と、自費診療となる分離型ともに対応しております。かかりつけ歯科での作成をご希望の場合には紹介状を作成させていただきます(保険診療でのマウスピース作成には医科からの紹介状が必要となります)。
メリット:
・CPAP療法に比べて、小型で持ち運びやすく、装着が簡単です。
・保険適用される一体型のものは2,3万前後と比較的安価です。
デメリット:
・あごの痛みや歯の移動、口の乾燥などの副作用が出る場合があります。
・重症のSASには効果が期待できない場合があります。
・根治的な治療ではないため、減量や手術などで原因が除去できない場合は基本的に使い続けることになります。

4.CPAP(シーパップ)療法、持続陽圧呼吸療法
就寝時に鼻にマスクを装着し、空気を送り込み気道を広げて呼吸を確保する方法で、現段階では最も有効性が高く、安全かつ確実な治療法です。簡易検査でAHI 40以上または精密検査でAHI 20以上の方が保険適応となります。健康保険が適用され、レンタル代・診察代を含め3割負担の方で1月あたり約5,000円です。
メリット:
・非侵襲的で、体に負担が少ない治療法です。
・使用方法が比較的簡単です。
デメリット:
・根治的な治療ではないため、減量や手術などで原因が除去できない場合は基本的に使い続けることになります。
・マスクの装着感や空気圧の違和感で使用できない方もいます。
・空気漏れや乾燥、鼻閉感などのトラブルが起こる場合があります。
・小型の機械もありますが、基本的に持ち運びがしにくいです。

2.手術療法
扁桃腺や口蓋垂(のどちんこ)が大きいなど、喉の構造が狭い場合は、扁桃腺の摘出やレーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)、口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)などの手術によってSASを根本的に治療できる可能性があります。
また、CPAP療法の継続が難しいAHI20以上の方で、BMI30以上の肥満がない場合では、舌下神経刺激装置植込術という新しい手術治療もごく限られた施設で行われています。診察時の所見や治療経過に応じて適切な施設にご紹介させていただきます。
メリット:
・根治的に改善できる可能性があります。
・CPAPやマウスピースが何らかの理由で使用できない場合に選択肢となる場合があります。
デメリット:
・ 一般的に全身麻酔による手術が必要となるため、体への負担が大きいです。
・手術の傷による瘢痕などで、のどの違和感など後遺症が残る場合があります。
・レーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)などのレーザー治療では再発することがあります。

※ いびきに対して無呼吸検査をせずに日帰りレーザー治療を行っている施設が最近とても増えています。
レーザー治療は、いびきだけで無呼吸がない単純性いびき症(AHI5以下)の方にはある程度の効果が認められていますが、少なくとも中等度以上の睡眠時無呼吸症候群 (AHI15以上) の患者さんに対する効果を示すデータはありません。費用も高額ですので、まずはしかるべき医療機関で検査されてから、睡眠時無呼吸症候群がない場合に選択肢として検討することを強くおすすめいたします。
いびき・睡眠時無呼吸症候群の検査は、内視鏡検査や簡易検査、初診・再診料など含めて保険3割負担の方で4,000円程です。どうぞお気軽にご相談ください。

最後に

睡眠時無呼吸症候群の潜在患者数は、日本国内で約900万人と推計されており、まだまだ診断・治療がしっかりとされていない方がたくさんいらっしゃるのが現状です。
ご自身や大切な方の健康のためにも「たかが、いびき」と思わずに、気になる症状がある方は、お早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
当院では耳鼻咽喉科と矯正歯科で連携して、いびき、睡眠時無呼吸症候群の検査、治療を行っております。
どうぞお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

  • いびきは病気ですか?

    いびき自体がすべて病気というわけではありません。しかし、いびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインである可能性があります。ご自身でいびきが気になる場合や家族から指摘された場合は、耳鼻咽喉科を一度受診されることをおすすめします。

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は自然に治りますか?

    SASは大幅に減量に成功した場合などを除いて、自然に治ることはほとんどありません。重症度によっては、命に関わる病気のリスクが上がることがデータでも示されていますので、早期に診断し、適切な治療を開始することが大切です。

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は保険適用されますか?

    はい、薬物療法やマウスピース療法、CPAP療法など、当院で行っているほとんどの治療に関しては基本的に健康保険が適用されます。ただし、検査結果や治療の内容によっては、保険適用外となる場合もありますので、まずはお気軽にご相談ください。

  • どんな人が睡眠時無呼吸症候群(SAS)になりやすいですか?

    肥満、男性、閉経後の女性、扁桃腺肥大、あごの小さい人、家族にSASの人がいる人などは、SASになりやすい傾向があります。

参考文献
1. Johansson K, Sjöström LG, Peltonen M, et al. Long-term effects of very low energy diet and lifestyle intervention on obese men with and without obstructive sleep apnoea. *JAMA*. 2009;302(16):1740-1745.
2. Yaggi HK, Conclisk J, Caso VP, et al. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. *N Engl J Med*. 2004;351(19):1934-1941.
3. Peppard PE, Young T, Palta M, Skatrud J. Prospective study of the association between sleep-disordered breathing and hypertension. *N Engl J Med*. 2000;342(19):1378-1384.
4. Gami AS, Pressman GS, Caples SM, et al. Association of atrial fibrillation and sleep-disordered breathing. *N Engl J Med*. 2005;352(11):1074-1082.
5. Mehra R, Punjabi NM, Benjamin EJ, et al. The association between sleep-disordered breathing and diabetes mellitus in the Sleep Heart Health Study. *Am J Respir Crit Care Med*. 2007;175(3):229-234.
6. Young T, Blustein J, Finn L, Palta M, Peppard PE. Sleep-disordered breathing and motor vehicle accidents in a population-based sample of employed adults. *Sleep*. 1997;20(8):631-637.

仲宿つくも耳鼻咽喉科・矯正歯科

仲宿つくも耳鼻咽喉科 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科
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