かぜをひいた数日だけのいびきは珍しくありません。一方で、ほぼ毎晩の大きないびき、口呼吸、息が止まる、苦しそうな呼吸が続く場合は、鼻やのどの空気の通り道が狭くなっている可能性があります。気になる様子を動画に撮り、耳鼻咽喉科でご相談ください。
この記事の結論
子どものいびきの主な原因は、アデノイド・扁桃の肥大やアレルギー性鼻炎などによる鼻づまりです。睡眠中の呼吸停止や胸がへこむような呼吸があれば、睡眠時無呼吸を含めた評価が必要です。OSA-18セルフチェックでは、過去4週間の様子を18問で確認できます。
子どものいびきが起こる仕組み
眠ると全身の筋肉がゆるみ、鼻の奥からのどにかけての「上気道」と呼ばれる空気の通り道も狭くなります。その狭い部分を空気が通ると、のどの粘膜や軟口蓋などが振動して音が出ます。これがいびきです。鼻づまり、アデノイド肥大、扁桃肥大などで空気の通り道がもともと狭いと、眠ったときにさらに狭くなり、いびきが起こりやすくなります。
かぜをひいている数日だけ、疲れた日だけに軽いいびきをかくことはあります。一方、かぜが治っても毎晩続く大きないびきは、慢性的な鼻づまりや睡眠時呼吸障害のサインかもしれません。音の大きさだけで重症度は決まりませんが、呼吸の止まり方、胸やお腹の動き、睡眠の質、日中の様子を一緒に確認することが重要です。
「単純ないびき」と「睡眠時呼吸障害」の違い
呼吸が止まらず、酸素状態や睡眠への影響が乏しいものは単純性いびきと呼ばれます。これに対し、空気の流れが繰り返し弱くなる、呼吸が止まる、眠りが分断される状態は睡眠時呼吸障害です。その中でも、一定の診断基準を満たすものが閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。見た目だけで区別するのは難しいため、疑わしい場合は診察や睡眠検査で判断します。
子どものいびき、いつ受診する?
いびきは、睡眠中に狭くなった空気の通り道を空気が通るとき、のどの組織が振動して生じます。かぜや一時的な鼻づまりでも起こりますが、次のような様子が続く場合は「寝相」や「体質」だけで片づけず、一度ご相談ください。
- かぜをひいていない時期も、ほぼ毎晩いびきをかく
- 寝ている間に呼吸が止まる、息を再開するときに大きくあえぐ
- 胸やみぞおちがへこむような、苦しそうな呼吸をする
- 寝汗が多い、何度も目を覚ます、落ち着かず寝返りが多い
- 日中も口が開いている、鼻声が続く
- 朝なかなか起きられない、日中ぼんやりする、機嫌が不安定
特に「毎晩に近い頻度で続く」「以前より音が大きくなった」「呼吸が止まってから大きく息を吸う」「眠る姿勢が不自然」といった変化は、受診を考える目安になります。首を強く反らす、うつ伏せや座るような姿勢でないと眠れない場合は、本人が無意識に空気の通り道を確保しようとしている可能性があります。
主な原因は「鼻」と「のど」
アデノイド肥大・扁桃肥大
アデノイドは鼻の突き当たりにあるリンパ組織、口蓋扁桃はのどの左右にある組織です。どちらも細菌やウイルスから体を守る免疫組織で、子どもの時期は生理的に大きくなります。アデノイドが鼻の奥を塞ぐと、鼻呼吸がしにくくなって口呼吸や鼻声が起こります。扁桃が大きいと、眠ったときのどが狭くなり、いびきや無呼吸につながります。
アデノイド肥大は耳と鼻をつなぐ耳管の働きにも影響し、滲出性中耳炎や聞こえにくさを伴うことがあります。「呼びかけへの反応が悪い」「テレビの音量が大きい」といった様子もあれば、耳の診察も必要です。
アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・かぜ
鼻水や鼻粘膜の腫れで鼻呼吸がしにくくなると、睡眠中も口呼吸になり、いびきが出やすくなります。特にダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎は、一年を通して鼻づまりが続くことがあります。子どもは鼻づまりをうまく言葉にできず、鼻をすする、鼻をこする、口を開けて食べるといった行動が手がかりになります。
黄色や緑色の鼻水、痰がらみの咳、口臭が長く続くときは副鼻腔炎が隠れている場合があります。かぜをきっかけにいびきが始まっても、鼻水や咳が長引くときは鼻の治療が必要です。
肥満やあごの形など
体重増加によってのどの周囲が狭くなることや、あごが小さいなど骨格上の特徴が関係する場合もあります。原因が一つではなく、アデノイド、鼻炎、体格などが重なっているお子さんもいます。
口呼吸が習慣として残っている場合
鼻づまりが改善した後も口を開ける癖が残ることがあります。ただし、見た目だけで「癖」と決めつけるのは禁物です。鼻の通り、アデノイド、扁桃、舌やあごの状態を確認してから、必要に応じて歯科・矯正歯科や口腔機能の評価につなげます。
年齢・時間帯で異なる気づき方
子どもの睡眠時呼吸障害は、年齢によって現れ方が異なります。「いびき」という一つの症状だけでなく、食事、遊び、園や学校での様子を含めて考えます。
| 時期 | ご家庭で気づきやすい様子 |
|---|---|
| 乳幼児 | ミルクや食事の途中で息継ぎが多い、寝汗が多い、眠りが浅い、胸がへこむように呼吸する |
| 幼児 | 口を開けている、鼻声、寝相が激しい、夜中に何度も起きる、日中の機嫌が不安定 |
| 学童期 | 朝起きにくい、授業中にぼんやりする、集中が続かない、落ち着きがない、夜尿が続く |
大人の睡眠不足は「眠い」「だるい」と現れやすいのに対し、子どもでは興奮しやすい、落ち着かない、怒りっぽいなど、一見すると眠気とは反対の行動として出ることがあります。保護者から見た睡眠の様子と、園や学校から聞いた日中の様子の両方が大切です。
睡眠時無呼吸との関係
睡眠時無呼吸では、眠っている間に空気の通り道が繰り返し狭くなったり塞がったりします。十分に眠れているように見えても、睡眠が細かく分断され、日中の眠気だけでなく、落ち着きのなさ、集中しにくさ、朝の不機嫌などとして現れることがあります。
大人と違い、子どもは「眠い」とはっきり訴えないことがあります。園や学校での様子、朝の目覚め、寝汗、夜尿なども診察の手がかりになります。
成長や学習への影響
深い睡眠が十分にとれない状態が続くと、成長、注意力、記憶、学習、感情の安定に影響する可能性があります。すべてがいびきだけで説明できるわけではありませんが、いびきと同時に身長・体重の伸び悩み、食欲低下、集中困難がある場合は、睡眠の評価を行う意義があります。
夜尿や寝相との関係
睡眠時無呼吸は夜尿と関連する場合があります。また、頻繁な寝返りや不自然な睡眠姿勢は、本人が呼吸しやすい姿勢を探している可能性があります。寝相の悪さだけを治そうとせず、呼吸が苦しくないかを確認しましょう。
家庭で確認しておきたい7項目
診察では、診察室での鼻・のどの所見と、家庭でしか分からない睡眠の情報を組み合わせます。次の項目を1〜2週間ほどメモしておくと、症状の全体像を伝えやすくなります。
- 頻度:週に何日いびきをかくか。かぜがない時期にも続くか
- 時間帯:眠り始めだけか、一晩中か、明け方に強いか
- 呼吸:何秒くらい止まるか、息を再開するときにあえぐか
- 体の動き:胸やみぞおちがへこむ、首を反らす、座るように眠るか
- 睡眠の質:寝汗、夜間覚醒、寝相、夜尿、朝の起きにくさ
- 日中の様子:眠気、集中、機嫌、園や学校で指摘された変化
- 鼻・耳の症状:鼻水、鼻づまり、くしゃみ、鼻声、聞こえにくさ
スマートフォンの録音だけでもいびきの特徴は分かりますが、動画では呼吸に伴う胸・お腹の動きを確認できます。部屋を明るくしすぎて睡眠を妨げない範囲で、横顔と胸元が映るように撮影してください。普段と違う一晩だけでなく、典型的な症状が出た場面を持参すると参考になります。
OSA-18で子どものいびきをセルフチェック
OSA-18は、小児の睡眠呼吸障害が、お子さんの睡眠・身体・情緒・日中の生活と保護者へどの程度影響しているかを確認する18項目の質問票です。過去4週間のお子さんの様子を思い浮かべ、最も近い回答を1〜7点から選んでください。
ご指定の研究では、AHI 5回/時以上を基準とした場合は58点、AHI 10回/時以上を基準とした場合は65点が、OSA-18総合スコアのカットオフ値として報告されています。このチェックでは、58〜64点を「中等度以上の睡眠時無呼吸症候群の可能性があります」、65点以上を「重症の睡眠時無呼吸症候群の可能性があります」と表示し、受診をご案内します。
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3分でできる受診目安チェック
OSA-18 日本語版
あなたのOSA-18総合スコア
— / 126点
- 睡眠障害
- — / 28
- 身体的問題
- — / 28
- 情緒面
- — / 21
- 日中の問題
- — / 21
- 保護者の視点
- — / 28
このチェックについて
- OSA-18は生活の質と症状を確認するスクリーニングであり、睡眠時無呼吸症候群を確定診断する検査ではありません。
- 58点・65点という区分は参照研究のカットオフ値に基づく受診目安です。実際の重症度は診察や睡眠検査などを含めて判断します。
- 58点未満でも、呼吸停止、苦しそうな呼吸、唇が紫色になるなどの症状があれば点数にかかわらず受診してください。
- 点数はこの端末内で計算され、当院や外部へ送信・保存されません。
設問・判定根拠:北村剛一ほか「小児の睡眠時無呼吸症候群におけるOSA-18日本語版の有用性の検討」口咽科 2014;27(2):127-133.
耳鼻科では何を調べる?
まず、いびきの頻度、呼吸停止の有無、日中の様子、鼻炎症状などを伺います。そのうえで鼻や口の中、扁桃の大きさを確認し、必要に応じて次の検査を検討します。
| 診察・検査 | 確認すること |
|---|---|
| 鼻・のどの診察 | 鼻粘膜の腫れ、鼻水、扁桃肥大など |
| 鼻咽腔内視鏡・X線 | 鼻の奥にあるアデノイドの大きさ、空気の通り道 |
| アレルギー検査 | 鼻づまりの背景にあるスギ、ダニなどのアレルゲン |
| 睡眠検査 | 睡眠中の呼吸状態や酸素飽和度など(必要な場合) |
すべてのお子さんにすべての検査を行うわけではありません。年齢や症状、診察所見に合わせて必要性を判断します。
診察から診断までの考え方
まず鼻づまりや扁桃肥大など、目で確認できる原因を調べます。アデノイドは口を開けただけでは見えないため、必要に応じて細い内視鏡やX線で評価します。睡眠中の無呼吸が疑われる場合は、酸素飽和度や呼吸の状態を一晩記録する検査を検討します。検査方法は年齢や協力度、症状の強さによって選びます。
いびきの原因が複数ある場合は、まず鼻炎を治療して変化を見ることもあります。治療後の動画や症状の記録を比較すると、鼻づまりの影響とアデノイド・扁桃の影響を整理しやすくなります。
治療は原因と重症度に合わせます
鼻づまりの治療
アレルギー性鼻炎が関係している場合は、内服薬や点鼻薬、環境整備などで鼻呼吸を整えます。原因アレルゲンや年齢などの条件が合えば、スギ・ダニの舌下免疫療法を検討できる場合もあります。
鼻の治療は「いびきの薬」を飲むのではなく、空気の通り道を妨げる炎症を改善することが目的です。ダニ対策、寝具の清掃、適切な点鼻薬の使用などを組み合わせ、数週間単位で睡眠中の呼吸が変わるかを確認します。
アデノイド・扁桃への対応
軽い症状では鼻炎治療などを行いながら経過を見ることがあります。一方、睡眠時無呼吸があり、アデノイドや扁桃の肥大が主な原因と考えられる場合は、連携する医療機関で手術を検討します。手術が必要かは、症状、年齢、検査結果を総合して判断します。
軽症の小児睡眠時無呼吸症候群を対象とした無作為化比較試験では、ブデソニド点鼻薬を6週間使用した子どもの54.1%で睡眠検査指標が正常化し、無呼吸低呼吸指数(AHI)とアデノイドの大きさにも改善がみられました。
また、アデノイドが鼻の奥を75%超塞ぎ、慢性的な鼻閉がある子どもを対象とした別の無作為化比較試験では、モメタゾン点鼻薬を40日間使用した27人中21人、77.7%で鼻閉症状の重症度とアデノイドの大きさが改善しました。プラセボ群では改善が確認されませんでした。
ただし、54.1%は軽症の睡眠時無呼吸における睡眠検査指標の正常化率、77.7%は鼻閉症状とアデノイドサイズの改善率であり、「すべての小児の無呼吸が77.7%治る」という意味ではありません。効果には個人差があり、中等度以上の睡眠時無呼吸、強い扁桃肥大、低酸素などがある場合は手術を含む評価が必要です。使用する薬剤や期間は、診察所見と年齢に応じて医師が判断します。
出典:Kheirandish-Gozal L, Gozal D. Pediatrics. 2008/Criscuoli G, et al. Pediatrics. 2007.
手術を検討する場合
アデノイド切除術や口蓋扁桃摘出術は、睡眠時無呼吸の改善が期待できる治療です。ただし、手術の必要性は扁桃の見た目の大きさだけでは決まりません。睡眠への影響、鼻の状態、体格、合併症、年齢を確認し、入院や麻酔を含めて専門施設で相談します。当院で手術が適切と判断した場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。
治療後も経過を確認します
薬や手術によっていびきが軽くなっても、鼻炎、体重増加、骨格など別の要因が残る場合があります。音が小さくなったかだけでなく、呼吸停止、寝汗、朝の目覚め、日中の様子が改善したかを確認します。
よくある質問
いびきがあると、必ず睡眠時無呼吸ですか?
受診するなら、子どもが寝ている動画は必要ですか?
口呼吸は歯並びにも関係しますか?
かぜをひくたびにいびきが出ます。毎回受診が必要ですか?
昼寝ではいびきをかかず、夜だけです。問題ありませんか?
市販のいびき防止グッズを子どもに使ってもよいですか?
参考情報
- 北村剛一ほか「小児の睡眠時無呼吸症候群におけるOSA-18日本語版の有用性の検討」
- Kheirandish-Gozal L, Gozal D. Intranasal Budesonide Treatment for Children With Mild Obstructive Sleep Apnea Syndrome. Pediatrics. 2008.
- Criscuoli G, et al. The Role of Mometasone Furoate Aqueous Nasal Spray in the Treatment of Adenoidal Hypertrophy in the Pediatric Age Group. Pediatrics. 2007.
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「睡眠時無呼吸」
- 当院「こどもの症状・病気」
- 当院「いびき・睡眠時無呼吸症候群」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。診断・治療はお子さんの状態により異なります。


