耳の中がかゆいと、綿棒や耳かきで触りたくなります。しかし、外耳道の皮膚は薄く、繰り返しこすると小さな傷ができ、さらにかゆくなる悪循環に陥ります。耳のかゆみは外耳炎が多い一方、乾燥した耳垢、湿疹、イヤホンや補聴器による接触刺激、真菌性外耳道炎、鼓膜の奥から流れた耳だれなど原因はさまざまです。市販の液体や以前の点耳薬を自己判断で入れず、長引く場合は耳の中を直接確認しましょう。
この記事の結論
耳のかゆみが続くときは、まず耳かき・綿棒・指で触るのをやめ、耳の中へ水や市販液を入れないことが大切です。痛み、耳だれ、聞こえにくさ、腫れを伴う場合は耳鼻咽喉科へ。糖尿病や免疫機能の低下があり、夜も眠れない強い痛みがある場合は早めの受診が必要です。原因により必要な点耳薬が異なり、鼓膜に穴があると使えない薬もあるため、診察前の自己治療は避けてください。
耳がかゆいとき、耳かきで悪化するのはなぜ?
外耳道は耳の入口から鼓膜までの通り道です。皮膚が薄く、骨の上では皮下組織も少ないため、爪、綿棒、金属製の耳かきで容易に傷つきます。耳垢には皮膚を保護する働きがあり、取りすぎると乾燥や刺激を受けやすくなります。
かゆいから触る、触って傷ができる、炎症でさらにかゆくなる、また触る――という流れを「かゆみと掻破の悪循環」と考えると分かりやすいでしょう。耳かき直後は一時的にすっきりしても、翌日以降にかゆみやヒリヒリ感が強くなることがあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、外耳道は刺激に弱く、耳掃除でも炎症を起こしてかゆみの原因になると案内しています。
耳のかゆみで考える主な原因
外耳炎
耳かきや爪でできた傷、水分、皮膚のバリア機能低下をきっかけに炎症が起こります。初めはかゆみだけでも、進むと耳を引っ張ったときの痛み、耳だれ、外耳道の腫れ、聞こえにくさが出ます。水泳後だけでなく、入浴、汗、イヤホンの長時間使用でも起こります。
外耳道湿疹・皮膚炎
乾燥、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬などが耳の入口や外耳道に現れることがあります。皮がむける、粉をふく、入口が赤い、両耳や耳の後ろもかゆい場合は皮膚の状態を確認します。シャンプー、整髪料、毛染め、イヤホンや補聴器の素材、長く使った点耳薬による接触皮膚炎も鑑別します。
耳垢のたまり・取りすぎ
乾いた耳垢が動いて刺激になる場合と、耳掃除で耳垢を奥へ押し込み外耳道をふさいでいる場合があります。一方、耳垢を完全に取り除こうとして皮膚を傷つけ、かゆみを作っている方も少なくありません。耳垢の量は個人差があり、かゆみだけで耳垢が多いとは判断できません。
真菌性外耳道炎(耳のカビ)
外耳道で真菌が増殖した状態で、強いかゆみ、耳の詰まり、耳だれなどがみられます。湿気が多い環境、耳を頻繁に触る習慣、抗菌薬を含む点耳薬の長期使用などが背景になることがあります。見た目や症状だけで細菌性外耳炎と区別しにくく、耳の清掃と適切な薬の選択が必要です。
中耳からの耳だれ
鼓膜に穴がある慢性中耳炎や、鼓膜切開・鼓膜チューブ後などでは、鼓膜の奥から出た液が外耳道を刺激してかゆくなることがあります。外耳だけを治療しても繰り返すため、鼓膜まで確認します。
症状から考える原因の違い
| 症状・状況 | 考える状態 |
|---|---|
| 耳を引くと痛い、入口が腫れる | 外耳炎、外耳道のおでき |
| 白い粉、皮むけ、両耳の入口がかゆい | 乾燥、外耳道湿疹、皮膚疾患 |
| 強いかゆみと耳だれ、治療しても長引く | 真菌性外耳道炎、接触皮膚炎など |
| 耳がふさがる、入浴後に聞こえにくい | 耳垢栓塞、外耳道の腫れ |
| イヤホン使用時に悪化する | 蒸れ、摩擦、素材による刺激 |
| 水っぽい耳だれが繰り返す | 外耳炎、中耳炎、鼓膜穿孔など |
この表は目安であり、同じ症状でも原因は異なります。特に「耳カビかもしれない」と市販薬を試すと、鼓膜の状態や薬の成分によっては刺激が強くなることがあります。耳鏡や顕微鏡で外耳道と鼓膜を確認することが診断の基本です。
早めに耳鼻咽喉科を受診する症状
- かゆみが数日続き、耳を触らずにいられない
- 耳痛、耳だれ、悪臭、出血がある
- 外耳道が腫れ、聞こえにくい・詰まる
- 耳介や耳の周囲まで赤く腫れている
- 発熱、めまい、顔の動かしにくさを伴う
- 耳の周囲に水疱があり、強く痛む
- 異物や虫が入った、耳かき事故の後から症状がある
糖尿病、抗がん薬治療中、免疫機能が低下する病気がある方で、見た目以上に強い痛み、とくに夜間の痛みが続く場合は、重い外耳道感染を除外する必要があります。市販の鎮痛薬だけで長く様子を見ず、早めに相談してください。
突然の難聴、強い耳鳴り、めまいが主体の場合は、外耳炎とは別の内耳疾患も考えます。「かゆくて触ったせい」と決めつけず、聴力検査が必要か判断を受けてください。
耳鼻咽喉科で行う診察・検査
外耳道と鼓膜の観察
耳鏡、顕微鏡、内視鏡などを使い、傷、腫れ、耳垢、耳だれ、真菌を疑う付着物、鼓膜穿孔、中耳炎の有無を確認します。耳が腫れて狭くなっている場合は、無理のない範囲で分泌物を除去し、薬が患部へ届く状態にします。
聴力・鼓膜の検査
聞こえにくさがある場合は、耳垢や外耳道の腫れによる伝音難聴か、内耳の難聴が隠れていないかを調べます。鼓膜の動きや中耳の状態を確認する検査を追加することもあります。
細菌・真菌の検査
治療しても改善しない、繰り返す、通常と異なる耳だれがある場合は、分泌物を採取して細菌や真菌を調べることがあります。すべての方に培養検査が必要なわけではなく、診察所見と治療経過で判断します。
生活用品・皮膚疾患の確認
綿棒や耳かきの頻度、イヤホン・耳栓・補聴器、整髪料や毛染め、皮膚疾患、使用中の点耳薬を確認します。原因となる刺激を残したまま薬だけを使うと再発しやすいため、生活背景の聞き取りも治療の一部です。
原因に合わせた治療
びまん性の急性外耳炎では、外耳道の清掃と局所の点耳薬が治療の中心です。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の診療ガイドラインは、合併症のない急性外耳炎の初期治療として局所薬を推奨し、感染が耳の外へ広がった場合や特定の基礎疾患がある場合を除き、内服抗菌薬を一律には用いないとしています。
ただし、鼓膜に穴がある、鼓膜チューブが入っている場合は、使用できる点耳薬を選ぶ必要があります。以前処方された薬や家族の薬を使い回さず、医師の指示どおりの回数と期間で使用してください。腫れが強く薬が奥へ入らない場合には、清掃や薬を届けるための処置が必要になることがあります。
外耳道湿疹では刺激を避け、炎症の程度に応じた外用薬を使います。真菌性外耳道炎では耳内の清掃と抗真菌作用のある局所治療を検討します。耳垢栓塞は、皮膚と鼓膜を傷つけないよう器具や吸引で除去します。原因が中耳炎であれば、外耳道だけでなく中耳の状態に応じて治療します。
適切に治療しても48~72時間で改善傾向が乏しい場合は、薬が届いているか、診断が合っているか、真菌や接触皮膚炎など別の要因がないかを再評価します。処方を自己判断で増やすのではなく、再診してください。
耳のかゆみを繰り返さないために
- 耳の穴へ綿棒、爪、耳かきを深く入れない
- かゆいときほど触らず、早めに診察を受ける
- 入浴後は入口の水分だけを柔らかい布で拭く
- イヤホンや耳栓を清潔にし、長時間連続で使わない
- 補聴器で蒸れ・擦れがある場合は調整を相談する
- 点耳薬は決められた期間を守り、残薬を使い回さない
耳垢は通常、皮膚の移動や顎の動きによって少しずつ外へ運ばれます。耳掃除が必要な頻度は人によって異なりますが、「毎日奥まできれいにする」必要はありません。耳垢がたまりやすい、補聴器を使う、外耳道が狭い、過去に手術を受けた方は、適切な清掃間隔を耳鼻咽喉科で相談してください。
よくある質問
耳がかゆいだけでも受診してよいですか?
綿棒は入口だけなら使えますか?
オリーブ油や消毒液を入れてもよいですか?
イヤホンをやめれば治りますか?
参考情報
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の症状」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」
- 日本耳鼻咽喉科学会 Web用語集「外耳道炎」
- AAO-HNSF Clinical Practice Guideline: Acute Otitis Externa
※点耳薬は鼓膜の状態や原因により選択が異なります。


