「治ったと思ったのに、また中耳炎になった」「抗菌薬を何度も飲んで大丈夫?」「鼓膜にチューブを入れた方がよい?」。乳幼児は耳と鼻をつなぐ耳管や免疫機能が発達の途中にあるため、かぜをきっかけに急性中耳炎を繰り返すことがあります。回数だけで治療を決めず、鼓膜の状態、聞こえ、年齢、発症間隔、鼻の症状を一緒に確認することが大切です。
この記事の結論
日本の「小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版」では、過去6か月以内に3回以上、または12か月以内に4回以上の急性中耳炎を一つの基準として反復性中耳炎と定義しています。ただし、この回数より少なくても症状が強い、治りにくい、耳だれや聞こえにくさが続く場合はご相談ください。抗菌薬、鼓膜切開、鼓膜換気チューブなどは、毎回の重症度と経過を確認して個別に検討します。
中耳炎は何回から「反復性」?
急性中耳炎は、主にかぜなどの感染をきっかけに、鼓膜の奥にある中耳へ炎症が起こる病気です。一度治った後に別の急性中耳炎を繰り返す状態を反復性中耳炎と呼びます。
日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会による2024年版ガイドラインでは、「過去6か月以内に3回以上、12か月以内に4回以上」を反復性中耳炎の基準としています。これは治療を自動的に決める数字ではなく、経過を詳しく評価するための目安です。
「耳が痛い回数」と「診断された回数」は同じではありません
耳の痛みは、急性中耳炎のほか、外耳炎、耳垢、のどからの関連痛などでも起こります。反対に、乳幼児は痛みを言葉にできず、機嫌が悪い、夜泣きが増える、耳を触るといった変化だけのこともあります。急性中耳炎の診断には、症状に加えて鼓膜の膨らみ、発赤、中耳にたまった液体などの確認が必要です。
子どもが中耳炎を繰り返しやすい理由
鼻の奥と中耳は「耳管」という細い管でつながっています。大人の耳管は傾斜がありますが、乳幼児では短く、太く、水平に近いため、鼻やのどの炎症が中耳へ影響しやすい構造です。さらに乳幼児期は、感染に対する免疫応答も発達の途中にあります。
かぜや鼻水が増える時期
集団保育の開始、きょうだいからの感染、冬場の流行などでかぜの機会が増えると、中耳炎も続けて起こることがあります。保育園へ通うこと自体が悪いのではなく、乳幼児が多くのウイルスに初めて出会う時期と重なるためです。多くのお子さんでは成長とともに耳管や免疫機能が発達し、発症回数が減っていきます。
鼻副鼻腔炎・アデノイドなど
鼻水や鼻づまりが長引くと、耳管の入口周辺の腫れが続くことがあります。鼻の奥にあるアデノイドが大きい場合も、鼻呼吸や耳管の換気に影響することがあります。ただし、アデノイドが大きければ必ず中耳炎になるわけではありません。鼻づまり、口呼吸、いびき、滲出性中耳炎などを合わせて評価します。
| 関係することがある要因 | 考え方 |
|---|---|
| 低年齢 | 耳管と免疫機能が発達途中で、特に乳幼児期は繰り返しやすい |
| かぜ・集団生活 | 上気道感染の機会が増えると、急性中耳炎の機会も増えることがある |
| 鼻の炎症 | 鼻水や鼻づまりが耳管周辺へ影響する場合がある |
| 受動喫煙 | たばこの煙への曝露は中耳炎の危険因子として報告されている |
| 基礎疾患 | 口蓋裂、ダウン症、免疫に関係する病気などでは個別の管理が必要 |
これらは「保護者の育て方が原因」という意味ではありません。変えられない年齢や体の構造も関係します。家庭でできる範囲の対策を行いながら、成長と経過を見て治療を調整します。
急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い
中耳炎を繰り返すお子さんでは、急性の痛みや熱が治まった後も、中耳に液体が残ることがあります。感染による急な炎症が中心の「急性中耳炎」と、鼓膜の奥に液体がたまる「滲出性中耳炎」は、症状と治療の考え方が異なります。
| 病気 | 主な症状・特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 急性中耳炎 | 耳の痛み、発熱、機嫌の悪さ、耳だれなど。鼓膜が赤く腫れ、膿がたまることがある | 重症度、年齢、全身状態、鼓膜所見 |
| 滲出性中耳炎 | 強い痛みや発熱がないことが多い。聞き返し、テレビの音量、呼びかけへの反応で気づくことがある | 液体が続く期間、両耳か片耳か、聴力への影響 |
痛みがなくなったことと、中耳の状態が完全に戻ったことは同じではありません。特に滲出液が長く続く、言葉の発達や園・学校での聞こえが心配な場合は、鼓膜と聴力を確認します。一方、滲出液があるだけで直ちに手術が必要になるわけではなく、自然に改善することもあります。
家庭で気づく症状と受診の目安
言葉で「耳が痛い」と訴えられない乳幼児では、いつもと違う様子が手がかりになります。ただし、次の行動だけで中耳炎と診断することはできません。鼻かぜに続いて複数の変化がみられる場合は、鼓膜を確認してもらいましょう。
- 夜中に急に泣く、横になると不機嫌になる
- 耳を触る、頭を振る、いつもより機嫌が悪い
- 発熱や鼻水に加えて、食欲や元気が落ちた
- 耳から液体や膿のようなものが出ている
- 呼びかけへの反応が弱い、聞き返しが増えた
- テレビやタブレットの音量を上げるようになった
早急な医療相談が必要な症状
耳の後ろが赤く腫れて強く痛む、耳介が外側へ押し出されたように見える、顔の片側が動かしにくい、強いめまい・急な難聴、ぐったりして反応が悪い、強い頭痛や首の硬さがある場合は、合併症を含めた早急な評価が必要です。夜間や休診日であれば救急相談・救急医療機関を利用してください。生後3か月未満のお子さんに38℃以上の発熱がある場合も、速やかに小児科または救急へご相談ください。
耳だれが出たときは、耳の入口を清潔なガーゼなどで軽く拭き、綿棒を奥へ入れないでください。以前処方された点耳薬や抗菌薬を自己判断で再使用せず、診察を受けましょう。
受診前に整理しておきたい記録
「何回も中耳炎になった」という情報に、時期と治療内容が加わると、反復性か、治りきらず続いているのかを判断しやすくなります。お薬手帳、他院の検査結果、保育園からの連絡なども参考になります。
- 発症日:耳の痛み・発熱・耳だれが始まった日
- 診断:急性中耳炎、滲出性中耳炎、外耳炎などと言われたか
- 左右:右、左、両耳のどこだったか
- 治療:抗菌薬・鎮痛薬・点耳薬、鼓膜切開の有無
- 改善まで:痛みや熱が何日で治まり、再診で鼓膜を確認したか
- 間の症状:聞こえにくさ、鼻水、鼻づまり、口呼吸が続いたか
耳鼻科で行う診察・検査
現在の症状だけでなく、過去の発症回数、抗菌薬の使用歴、集団生活、予防接種、鼻症状、聞こえや言葉の様子を確認します。すべてのお子さんにすべての検査を行うわけではなく、年齢と診察所見に合わせて選びます。
| 診察・検査 | 分かること |
|---|---|
| 耳鏡・顕微鏡 | 鼓膜の色、膨らみ、穿孔、耳だれ、中耳の液体などを確認 |
| ティンパノメトリー | 鼓膜と中耳の動きから、滲出液や耳管機能の影響を評価 |
| 年齢に応じた聴力検査 | 中耳炎による聞こえへの影響や、別の難聴がないかを確認 |
| 細菌検査 | 耳だれなどを採取し、原因菌と効きやすい抗菌薬を調べる場合がある |
| 鼻・上咽頭の診察 | 鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アデノイドなど併存する病気を確認 |
症状がない時期の受診にも意味があります
発熱や痛みがない時期でも、鼓膜の奥に液体が残っていないか、聴力が戻っているかを確認できます。反復性中耳炎でチューブを検討する際も、診察時に中耳貯留液があるかどうかは判断材料の一つです。
反復性中耳炎の治療
治療は「何回目か」だけではなく、その時点の急性中耳炎の重症度、年齢、全身状態、鼓膜所見、これまでの抗菌薬と細菌検査などから判断します。同じお子さんでも、軽い回と強い回で対応が異なることがあります。
痛みへの対応
耳の痛みには、年齢と体重に応じた解熱鎮痛薬を使用します。抗菌薬は痛み止めではなく、細菌感染への治療です。痛みが強い、眠れない、水分が取れない場合は診療時間を待たず医療機関へ相談してください。
抗菌薬は必要性を判断して使用
急性中耳炎でも、年齢、重症度、経過によっては抗菌薬をすぐ使わず、鎮痛と慎重な経過観察を行う場合があります。一方、症状が強い、低年齢、鼓膜所見が重い、改善が乏しい場合などは抗菌薬を検討します。使用する場合は医師の指示どおりの量と期間を守り、自己判断で中断・延長しないことが大切です。
以前の薬を残して次の発熱時に使うと、病気が中耳炎か確認できず、量や薬の選択も適切でない可能性があります。下痢、発疹などが出た場合は、服用を続けるかを処方元へ確認してください。
鼓膜切開を行う場合
鼓膜の奥に膿が強くたまり、痛みや発熱が強い場合などに、鼓膜へ小さな切開を行って膿を排出することがあります。すべての急性中耳炎に行う処置ではなく、重症度や抗菌薬への反応を踏まえて判断します。
鼓膜換気チューブを検討するとき
鼓膜換気チューブは、鼓膜に小さな管を留置し、中耳の換気と排液を助ける治療です。急性中耳炎の反復や滲出性中耳炎が続く場合に検討されますが、「6か月に3回なら必ず手術」というものではありません。
検討時には、診察時の中耳貯留液、発症回数と重症度、抗菌薬の効果と副作用、聞こえへの影響、年齢、基礎疾患、ご家族の負担と希望などを総合します。小さなお子さんでは全身麻酔が必要になる場合があり、耳だれ、チューブの閉塞、自然脱落後も鼓膜の穴が残る可能性なども説明を受けます。
6〜35か月の反復性急性中耳炎の子どもを対象とした無作為化比較試験では、2年間の急性中耳炎の年間発症率は、チューブ群1.48回、内科的管理群1.56回で、主要評価項目に統計学的な有意差はありませんでした。
初回再発までの期間などチューブ群に有利な項目がある一方、耳だれの日数は内科的管理群に有利で、結果は一方向ではありませんでした。この研究だけで個々のお子さんの適否は決められませんが、「繰り返す全員にチューブを入れればよい」という単純な選択ではないことを示しています。
出典:Hoberman A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1789-1799.
アデノイド手術について
アデノイド肥大による強い鼻閉や慢性アデノイド炎、年齢、滲出性中耳炎の経過などによっては、専門施設でアデノイド手術を検討する場合があります。反復性中耳炎があるという理由だけで一律に行う手術ではありません。当院で手術が適切と考えられる場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。
家庭でできる再発対策
中耳炎を完全に防ぐ方法はありませんが、変えられる要因へ無理のない範囲で対応します。発症したときは早く気づき、治療後の鼓膜と聞こえを確認することも大切です。
- 定期予防接種は、かかりつけ小児科と相談して標準スケジュールに沿って受ける
- 家庭や車内での受動喫煙を避ける
- 手洗いなど一般的な感染対策を続ける
- 鼻水や鼻づまりが長引く場合は、原因に応じた診察・治療を受ける
- 抗菌薬を家族間で共有せず、余った薬を自己判断で使わない
- 聞き返し、テレビの音量、言葉の様子を園や学校とも共有する
耳掃除で中耳炎は予防できません
中耳炎は鼓膜の奥で起こるため、綿棒や耳かきで掃除しても予防にはなりません。むしろ奥まで入れると外耳道を傷つけたり、耳垢を押し込んだりすることがあります。耳垢で鼓膜が見えない場合は、耳鼻咽喉科で安全に除去します。
よくある質問
中耳炎を繰り返すのは、治療が不十分だったからですか?
保育園を休めば中耳炎を繰り返さなくなりますか?
抗菌薬を何度も飲むことが心配です。
痛みがなくなれば、再診しなくてもよいですか?
中耳炎を繰り返すと、言葉が遅れますか?
鼓膜チューブを入れれば、もう中耳炎になりませんか?
プールに入っても大丈夫ですか?
参考情報
- 日本耳科学会ほか「小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「反復性中耳炎」
- Hoberman A, et al. Tympanostomy Tubes or Medical Management for Recurrent Acute Otitis Media. N Engl J Med. 2021.
- 日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版」
- 当院「急性中耳炎・内耳炎」
- 当院「滲出性中耳炎」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたデモです。診断・治療は、お子さんの年齢、鼓膜所見、聴力、基礎疾患などにより異なります。



