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味がしない・味が薄い|味覚障害の原因・検査・治療

食事の味が薄い、甘味や塩味が分からない、何も食べていないのに苦い味がする。このような状態を広く味覚障害と呼びます。ただし「味がしない」という訴えの中には、鼻づまりや嗅覚障害で香りを感じられず、食べ物の風味が分かりにくい場合が多く含まれます。亜鉛不足だけが原因とは限らず、薬剤、口腔乾燥、舌の炎症、全身疾患、感冒後などを順に確認します。

この記事の結論

味覚障害では、まず本当の味覚低下か、嗅覚低下による風味の低下かを区別します。亜鉛、鉄、銅、貧血、全身疾患、薬剤、口腔内の状態を確認し、原因に合った治療を行います。亜鉛サプリを自己判断で長期・大量に摂ると銅欠乏を起こすことがあるため、採血や服薬確認を受けてください。片側の麻痺、ろれつ障害、激しい頭痛を伴う急な変化は救急受診が必要です。

「味」と「風味」は同じではありません

舌の味蕾は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味を感じます。一方、コーヒー、カレー、果物などの特徴的な風味には、口から鼻へ抜ける香りが大きく関わります。鼻をつまんで食べると食品の違いが分かりにくくなるのはこのためです。

鼻づまり、副鼻腔炎、感冒後の嗅覚障害があると、「舌では甘いと分かるが、何を食べているか分からない」という状態になります。本人は味覚障害と感じても、味覚検査が正常で嗅覚検査に異常が見つかることがあります。まず鼻づまりやにおいの低下が同時にあるかを確認します。

味覚と嗅覚の両方が低下する場合もあります。感染症、薬剤、加齢、全身状態など複数の要因が重なることがあるため、一つの原因に決めつけません。

味覚障害の症状にはいくつかの型があります

感じ方 症状の例
味覚減退・脱失 全体に薄い、ほとんど味が分からない
部分的味覚低下 甘味だけ、塩味だけなど特定の味が分かりにくい
異味症 本来と違う味に感じる、何を食べても苦い・金属味がする
自発性異常味覚 何も食べていないのに苦味や渋味を感じる
解離性味覚障害 特定の基本味だけが選択的に分かりにくい
風味障害 基本味は分かるが、食品の香りや種類が分かりにくい

症状は「全く分からない」だけではありません。味が濃く感じる、嫌な味へ変わることもあります。発症時期、急か徐々か、全体か特定の味だけか、舌の左右差、嗅覚の変化を聞き取ります。

亜鉛不足以外にも多くの原因があります

亜鉛欠乏・栄養状態

亜鉛は味細胞の新陳代謝に関わり、不足すると味覚障害を起こすことがあります。偏った食事だけでなく、消化管からの吸収低下、慢性の下痢、腎疾患、肝疾患、糖尿病、薬剤などが関係します。鉄欠乏や銅の異常も確認することがあります。

薬剤性

降圧薬、利尿薬、抗菌薬、抗がん薬、向精神薬など多くの薬が、味覚、唾液量、亜鉛代謝へ影響する可能性があります。服薬を始めた時期と症状の開始を確認しますが、必要な薬を自己判断で中止してはいけません。処方医と相談して変更可能かを検討します。

口腔乾燥・舌や口腔の病気

味物質は唾液に溶けて味蕾へ届きます。加齢、脱水、薬剤、シェーグレン症候群などで口が乾くと味を感じにくくなります。舌炎、厚い舌苔、口腔カンジダ症、義歯の不具合、口内炎なども原因になります。舌苔を強く削ると粘膜を傷つけるため避けます。

感冒後・神経障害・医療処置後

かぜや新型コロナウイルス感染症の後、味覚・嗅覚の低下が続く場合があります。中耳手術、歯科処置、頭部外傷などで味覚を伝える神経が影響を受けることもあります。顔面神経麻痺では舌前方の味覚低下を伴う場合があります。

全身疾患・心因性

糖尿病、腎疾患、肝疾患、甲状腺疾患、貧血などの全身状態が関係します。検査で明らかな異常がない場合に心理的要因が影響していることもありますが、最初から「ストレス」と決めつけず、口腔・鼻・血液検査を含めて評価します。

受診のタイミングと危険な症状

数日で改善する感冒中の変化もありますが、2週間以上続く、食欲や体重へ影響する、薬を始めてから悪化した場合は受診をご検討ください。味が分からないと塩や砂糖を増やし、血圧・血糖へ影響することがあります。腐敗や焦げに気づきにくくなる安全面の問題もあります。

救急受診を考える症状顔や手足の片側が動かしにくい、ろれつが回らない、言葉が出ない、意識がおかしい、突然の激しい頭痛を伴う場合は脳卒中などの可能性があるため119番を検討してください。
  • 味覚低下とともに顔の片側が動かしにくい
  • 飲み込みにくさやむせが急に出た
  • 舌や口腔の潰瘍・しこりが2週間以上治らない
  • 強い口腔乾燥、目の乾燥、関節症状がある
  • 意図しない体重減少や栄養摂取の低下がある

耳鼻咽喉科で行う診察・検査

問診と口腔・鼻の診察

発症時期、基本味と風味のどちらが分かりにくいか、食事、服薬、全身疾患を確認します。舌、口腔粘膜、唾液、義歯、鼻腔を診察し、においの感じ方も確認します。

血液検査

血清亜鉛、鉄、銅、血算などを症状に応じて調べます。血清亜鉛値は食事や採血時間の影響を受けるため、数値だけで診断せず、症状、栄養状態、薬剤を合わせて判断します。腎・肝・甲状腺などの評価が必要なら内科と連携します。

電気味覚検査・濾紙ディスク法

電気味覚検査は舌などへ弱い電気刺激を加え、味覚の閾値や神経伝導路を評価します。濾紙ディスク法は甘味、塩味、酸味、苦味の溶液をしみ込ませた濾紙を置き、味の種類と濃度を確認します。実施できる施設は限られるため、必要に応じて専門施設へ紹介します。

嗅覚検査

風味障害が疑われる場合は、鼻内視鏡や画像検査で鼻・副鼻腔を確認し、嗅覚検査を検討します。当院ではT&Tオルファクトメーター法などによる精密な嗅覚検査は実施していないため、必要と判断した場合は対応可能な医療機関へご紹介します。嗅覚の治療で食事の感じ方が改善することがあります。

治療は原因に合わせて行います

亜鉛欠乏が考えられる場合は、食事内容を確認し、医師の管理下で亜鉛製剤を用いることがあります。改善には数か月かかる場合があり、症状と血液検査を再評価します。亜鉛を長期に過剰摂取すると銅の吸収が妨げられ、貧血や神経症状を伴う銅欠乏を起こす可能性があります。

薬剤性が疑われる場合は、処方医と相談して中止、変更、減量が可能か検討します。口腔乾燥には原因薬の調整、水分管理、口腔ケア、唾液分泌を補う方法などを選びます。カンジダ症、舌炎、口内炎があればそれぞれを治療します。

副鼻腔炎や鼻茸による嗅覚障害では、点鼻薬、内服、手術など鼻の治療を行います。感冒後や外傷性、神経障害では回復に時間がかかることがあります。自覚症状と味覚検査の変化が一致しない場合もあるため、食事量や生活上の困りごとも確認します。

味が分かりにくいときの食事の工夫

  • 塩や砂糖を一度に増やさず、香り・だし・酸味・食感を活用する
  • 口が乾く場合は、食べやすい水分量やとろみを調整する
  • 熱すぎる食品で口腔粘膜を傷つけない
  • 焦げや腐敗に気づきにくいため、調理時間と保存期限を確認する
  • 体重減少がある場合は、医師・管理栄養士へ相談する

塩味が分かりにくいからといって調味料を増やすと、高血圧や腎疾患の管理へ影響します。レモンや酢などの酸味、香味野菜、温度差、歯ごたえを利用すると、塩分を増やさず満足感を得られる場合があります。口内炎や胃の病気がある場合は刺激物を控えます。

受診前に確認しておくとよいこと

いつから、急にか徐々にか、甘味・塩味など基本味が分からないのか、食品の香りや種類が分からないのかを整理します。最近始めた薬、サプリメント、かぜ、歯科治療、手術、体重変化も伝えてください。

自己流で濃い食塩水などを舌へ付ける検査は、粘膜を刺激するため必要ありません。お薬手帳、健康診断や血液検査の結果があれば持参します。

よくある質問

味がしないのは、すべて亜鉛不足ですか?
違います。嗅覚障害、薬剤、口腔乾燥、舌の炎症、全身疾患など多くの原因があります。採血だけでなく診察と症状を合わせて判断します。
亜鉛サプリを先に飲んでもよいですか?
長期・大量摂取は銅欠乏などを起こす可能性があります。原因や基礎疾患を確認し、必要量を医師・薬剤師へ相談してください。
味覚検査はどこでもできますか?
電気味覚検査や濾紙ディスク法を実施できる施設は限られます。まず診察と基本検査を行い、必要に応じて紹介します。
味は分かるのに食品の区別ができません。
嗅覚低下による風味障害が疑われます。鼻づまりがなくても嗅覚障害は起こるため、鼻・副鼻腔と嗅覚を確認します。

参考情報

※検査と治療は症状、服薬、全身状態により異なります。

院長 渡邉 格

記事監修

仲宿つくも耳鼻咽喉科・矯正歯科 院長 渡邉 格
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医/日本気管食道科学会 専門医/日本音声言語医学会 音声言語認定医/日本嚥下医学会 嚥下相談医/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医

仲宿つくも耳鼻咽喉科・矯正歯科

仲宿つくも耳鼻咽喉科 耳鼻咽喉科 / 小児耳鼻咽喉科 / アレルギー科
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