舌下免疫療法を考え始めた方から多いのが、「今の時期から始められますか?」というご質問です。スギ花粉症の治療は花粉飛散期(概ね1月〜5月)を避けて開始しますが、ダニアレルギー性鼻炎の治療には季節制限はありません。ただし、どちらも検査結果だけで開始できるわけではなく、症状、ぜんそくの状態、口の中の状態、服薬状況などを診察で確認します。
この記事の結論
シダキュアによるスギ舌下免疫療法は、スギ花粉が飛散している時期に新規開始できません。花粉飛散の終了後に診察と検査を受け、開始できる時期や薬剤の在庫を確認します。ダニ舌下免疫療法は季節を問わず相談できますが、初回は体調が安定した日に医療機関で服用し、少なくとも30分間の観察が必要です。
舌下免疫療法を始められる時期の早見表
日本で舌下錠による治療対象となっているのは、スギ花粉による季節性アレルギー性鼻炎と、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎です。どちらも原因アレルゲンを少量ずつ毎日服用する治療ですが、開始時期には次の違いがあります。
| 治療する原因 | 新規開始の時期 | 開始前の主な確認 |
|---|---|---|
| スギ花粉 (シダキュア) | スギ花粉の飛散期を避ける。飛散終了後から次の飛散期前までに相談 | 前シーズンの症状、スギ特異的IgEなど、薬剤供給状況 |
| ダニ (ミティキュアなど) | 花粉による季節制限はなく、年間を通して相談可能 | 一年を通した鼻症状、ダニ特異的IgEなど、体調やぜんそくの状態 |
ここでいう「開始」とは、医師が適応を確認し、最初の錠剤を医療機関内で服用することです。相談や検査は必ずしも開始可能な時期まで待つ必要はありません。花粉飛散中にスギ花粉症の診断や現在の症状に対する治療を行い、飛散終了後の開始に向けて準備することもできます。
スギ舌下免疫療法はなぜ飛散期に始められない?
シダキュアの電子添文には、スギ花粉飛散時期は新たに投与を開始しないことが記載されています。飛散時期は、自然界から吸い込むスギ花粉によって患者さんの過敏性が高まっている場合が多く、そこへスギ花粉アレルゲンを含む薬を新しく投与すると、アレルギー反応が現れやすくなる可能性があるためです。
舌下免疫療法では、口の中のかゆみや腫れ、のどの刺激感などが治療開始初期に出ることがあります。花粉症そのものの鼻・目・のどの症状が強い時期に新しい治療を重ねると、花粉による症状なのか、薬による反応なのか評価しにくくなることもあります。安全に開始するためには、飛散状況と体調の両方を確認することが大切です。
日付ではなく「実際の飛散状況」で判断します
スギ花粉が飛び始める日や、飛散が落ち着く日は、地域とその年の気象条件によって変わります。東京では例年2月頃からスギ花粉が増え、その後ヒノキ花粉の時期が続きますが、毎年同じ日に開始・終了するわけではありません。そのため「5月になったら必ず開始できる」と日付だけで判断せず、医療機関の受付状況をご確認ください。
飛散期は現在の症状を整える時期
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが強いときは、まず抗アレルギー薬、鼻噴霧用ステロイド薬、点眼薬などで症状を整えます。鼻づまりが強い場合には、副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症、アデノイド肥大など、アレルギー以外の原因が隠れていないかも診察します。舌下免疫療法を希望していても、現在つらい症状への治療を後回しにする必要はありません。
東京でスギ舌下免疫療法を相談する時期
板橋区を含む東京でスギ舌下免疫療法を考える場合、春の飛散が終わってから早めに相談すると、その後の検査、説明、薬剤の準備に時間を取りやすくなります。次の表は年間計画の一例であり、実際の開始可否はその年の飛散状況と医療機関の受付状況で決まります。
| 時期の目安 | スギ花粉症への対応 | 舌下免疫療法の準備 |
|---|---|---|
| 冬〜春 | 花粉情報を確認し、対症療法を早めに準備 | 新規投与は行わず、診断や検査について相談 |
| 飛散終了後 | 今年の症状、使った薬、生活への影響を振り返る | 開始の相談に適した時期。適応と在庫を確認 |
| 夏〜秋 | 症状が少なくても通院や環境対策を継続 | 初回投与後の服用方法を整え、継続を習慣化 |
| 次の飛散期前 | 必要な対症療法薬も準備 | 自己中断せず毎日継続し、体調変化を相談 |
受診前に記録しておくとよいこと
- いつからいつまで症状があったか
- くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目の症状のうち、何が最もつらかったか
- 学校、仕事、睡眠、外出にどの程度影響したか
- 使用した内服薬、点鼻薬、点眼薬とその効果
- 過去のアレルギー検査結果があるか
「今年は薬を何日飲んだか」「夜の鼻づまりで何回起きたか」など、生活への影響を具体的に伝えると、舌下免疫療法を始める利点と負担を検討しやすくなります。
ダニ舌下免疫療法はいつ始める?
ダニは寝具、カーペット、布製品など身近な室内環境に存在し、ダニによるアレルギー性鼻炎は一年を通して症状が続くことがあります。ミティキュアには、シダキュアのような花粉飛散期による新規開始の禁止はありません。そのため、原因がダニであると診断され、全身状態に問題がなければ、季節を問わず開始を相談できます。
ただし「いつでも、受診した日に必ず開始できる」という意味ではありません。発熱や急性感染症がある、ぜんそく症状が強い、口内炎や抜歯後の傷があるなど、安全な服用に影響する状態では開始を延期することがあります。初回投与後に十分な観察時間を確保できる日を選ぶことも必要です。
症状と検査結果の一致が必要です
血液検査でダニ特異的IgEが陽性でも、実際の鼻症状がダニによるものとは限りません。朝にくしゃみが多い、掃除や布団の上げ下ろしで悪化する、一年を通して鼻づまりがあるといった経過と、鼻の中の所見を合わせて判断します。検査陽性という理由だけで治療薬を選ぶことはありません。
スギとダニの両方が陽性の場合
両方の治療が適している方もいますが、二つの薬を同じ日に初めて服用すると、副作用が出た場合に原因を判断しにくくなります。症状の強さ、季節、生活への影響から優先する一方を決め、服用が安定してからもう一方を追加できるか検討します。併用の可否や間隔は自己判断せず、処方医と相談してください。
開始前に確認する検査・体調・生活予定
舌下免疫療法は、アレルギー検査が陽性なら自動的に始める治療ではありません。薬の電子添文でも、皮膚反応テストまたは特異的IgE抗体検査を行い、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎の確定診断を行うことが求められています。問診、鼻の診察、検査を組み合わせ、原因と症状が一致するか確認します。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 鼻症状と検査結果 | 薬に含まれるスギまたはダニが実際の症状原因か判断するため |
| ぜんそく | 重症の気管支喘息は禁忌で、症状が不安定なときも慎重な判断が必要なため |
| 服用中の薬 | β遮断薬など、アレルギー反応時の治療へ影響し得る薬があるため |
| 口の中 | 口内炎、傷、抜歯後などは薬の刺激や吸収に影響する可能性があるため |
| 妊娠・持病 | 新規開始の可否を個別に検討する必要があるため |
| 通院と毎日の服用 | 長期間、自己判断で中断せず継続できるか確認するため |
他院で受けたアレルギー検査結果をお持ちの場合は、検査日が分かる用紙をご持参ください。再検査が必要かは、結果の項目、検査時期、現在の症状を見て医師が判断します。
相談から初回投与までの流れ
1. 問診と鼻の診察
症状が出る時期、場所、困っていること、対症療法薬の効果を確認します。鼻の粘膜の腫れ、鼻水、副鼻腔炎など、鼻症状に影響するほかの原因も診察します。
2. 原因アレルゲンを確認
必要に応じてスギ・ダニを含む特異的IgE抗体検査などを行います。当院には、指先からの少量採血で当日に判定する検査と、通常採血または指先採血で詳しく調べる外注検査があります。目的に合う検査を医師と相談します。
3. 効果・副作用・継続方法の説明
期待できる効果だけでなく、全員に効くわけではないこと、数年間の服用、定期通院、治療開始初期に多い口腔内症状、緊急時の対応について説明を受けます。毎日の服用を生活へ組み込めるかも確認します。
4. 薬剤を準備して院内で初回投与
初回は必ず医師の監督下で服用し、服用後少なくとも30分間は院内で安静にして経過を観察します。口の中の腫れ、咳、息苦しさ、皮膚症状などがないかを確認し、問題がなければ翌日以降は自宅で継続します。薬局の在庫や院内受付時間により、初診当日に初回投与まで行えない場合があります。
5. 自宅服用と定期通院
自宅では処方された薬を1日1回、説明された方法で服用します。服用前と服用後2時間は激しい運動、飲酒、入浴などを避けます。開始初期は副作用が出やすいため、家族がいる時間帯など、異変に気づきやすい時間を選びます。
子どもはいつ始めると続けやすい?
シダキュアとミティキュアは、5歳未満の幼児を対象とした有効性・安全性の臨床試験が行われていません。また年齢だけでなく、錠剤を舌の下に1分間保持できること、口の中や全身の変化を本人または保護者が伝えられること、毎日の服用を保護者が管理できることが重要です。
夏休みなど学校の予定に余裕がある時期は、初回受診や治療開始初期の体調確認を行いやすい利点があります。一方で、長期休暇まで必ず待つ必要はありません。スギ花粉の飛散状況、薬剤供給、習い事や運動部の時間を含めて、家庭ごとに続けやすい開始日を選びます。
登校直前・激しい運動の前は避ける
服用前後には激しい運動を避ける必要があるため、朝の登校前や運動部の直前が適さない場合があります。夕食後も入浴との間隔に注意が必要です。「家族が見守れる」「運動や入浴と十分な間隔がある」「毎日同じ流れにできる」という条件を満たす時間帯を考えます。
受験直前より、予定に余裕のある時期を
開始初期のおよそ1か月は、口の中のかゆみや腫れなどが出やすい時期です。受験、宿泊行事、長期旅行の直前より、体調変化があれば医療機関へ相談しやすい時期が安心です。進学や転居の予定がある場合は、数年間の治療をどこで継続するかも開始前に話し合います。
シダキュアの供給状況について
供給状況は地域、医療機関、薬局、時期によって変わります。受診時に処方可能でも、希望する日に必ず薬局で受け取れることを保証するものではありません。治療を希望される方は、医療機関の最新のお知らせを確認し、受診前に現在の受付状況をお問い合わせください。
薬剤を入手できない間も、抗アレルギー薬や鼻噴霧用ステロイド薬による対症療法、花粉を避ける環境対策は続けられます。供給が安定するまで症状を我慢するのではなく、現在できる治療を医師と相談しましょう。
よくある質問
スギ花粉が飛んでいる時期に、相談や検査だけ受けられますか?
何月からシダキュアを始められますか?
ダニ舌下免疫療法は夏や冬でも始められますか?
アレルギー検査をした日に治療も開始できますか?
花粉症の薬を飲んでいても相談できますか?
スギとダニを同じ日に開始できますか?
初回投与の日はどれくらい時間が必要ですか?
供給が不安定でも予約を取ればシダキュアを確保できますか?
参考情報
- PMDA「シダキュア 医療用医薬品情報」
- PMDA「ミティキュア 医療用医薬品情報」
- アレルギーポータル(日本アレルギー学会・厚生労働省)「花粉症」
- 厚生労働省「舌下投与用スギ花粉エキス原末錠の使用に当たっての留意事項」
- 東京都健康安全研究センター「東京都の花粉情報」
- Masuyama K, et al. Efficacy and safety of SQ house dust mite sublingual immunotherapy-tablet in Japanese children.
- Okamoto Y, et al. スギ花粉舌下錠の国内第II/III相試験
- 塩野義製薬「2025年度決算説明資料」(シダキュア限定出荷継続の記載)
- 当院「舌下免疫療法(スギ・ダニ)」
※花粉飛散、薬剤供給、受付時間、費用は変動します。公開時には電子添文と院内ページの最新情報をご確認ください。



